栂尾明恵上人伝記 2 二歳
上人自(みづか)ら語つていはく、二歳の時、乳母(うば)懷(いだ)きて淸水寺に詣(けい)す。時に堂内に僧俗群集して、或は看經(かんきん)し或るは禮拜(らいはい)す。其の聲を聞くに、何と思ひ分(わ)きたる事は無(なか)りしかども、心澄みて貴(たふと)く覺えき。共の後地主(じしゆ)の前に猿樂しける所へ、乳母見物の爲に具して罷(まか)りたりしに、それは見聞(けんもん)したくもなく覺えて、先の所へ行かんと啼(な)きたりし。是れ心に覺えて佛法を貴く思ひし始めなり。
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