リリシズムの悲哀(ペーソス) 萩原朔太郎
リリシズムの悲哀(ペーソス)
獸の如く、心に烈しい怒りや情熱やを持ちながら、獸の如く、常に忍從して語らず、靜かに智慧深く、そして音樂のやうに美しく、風なき薄暮の空に燃えのぼる火事の炎。それがリリシズムと呼ばれるものの、最も内奧的な悲哀(ペーソス)である………。
[やぶちゃん注:昭和一五(一九四〇)年創元社刊のアフォリズム集「港にて」の冒頭パート「詩と文學 1 詩――詩人」の二十二番目、先に示した「詩と激情性」の直後に配されたものである。]