黄色い馬 大手拓次
濕氣の小馬
黄色い馬
そこからはかげがさし、
ゆふひは帶をといてねころぶ。
かるい羽のやうな耳は風にふるへて、
黄色い毛竝(けなみ)の馬は馬銜(はみ)をかんで繫(つな)がれてゐる。
そして、パンヤのやうにふはふはと舞ひたつ懶惰(らんだ)は
その馬の繫木(つなぎ)となつてうづくまり、
しき藁(わら)のうへによこになれば、
しみでる汗は祈禱の糧(かて)となる。
[やぶちゃん注:「パンヤ」双子葉植物綱アオイ目アオイ科(新エングラー体系及びクロンキスト体系ではパンヤ科)パンヤ亜科セイバ属カポック Ceiba pentandra などのパンヤ類の植物の種子から繊維として採取される、紡ぐことが出来ない綿のような長毛。クッション・救命胴衣・ソフトボールの詰め物などに用いられる。ポルトガル語“panha”を語源とする。]
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ここより「濕氣の小馬」の章に入る。