自畫像 萩原朔太郎
自畫像
やさしく我の生くる日に
やさしく我の瞳を轉ず
ひとみを轉ずうみのうへ
ひとみを轉ずきみのうへ
またもろもろ魚鳥のうへ
われのあかるき美しき
われのするどきいぢらしき
われの額とわれの唇
われの心とわれの胸われの思は遠くして
われの愁はいや深し
われのみひとりしみじみと
われのみひとり血をながす
[やぶちゃん注:底本第二巻に所収する「習作集(哀憐詩篇ノート)」(「習作集第八巻」「習作集第九巻」と題されて残された自筆ノート分)の「習作集第九巻(一九一三、九)」所収(この二巻、巻数とクレジットは時系列ではない)。なお、原稿は後ろから二行目が『われのみひとみしんじみに』とあるが、底本の編者による補正された本文を採った。]