およぐひと(泳ぎの感覺の象徴) 萩原朔太郎 (「およぐひと」初出形)
およぐひと(泳ぎの感覺の象徴)
およぐひとのからだはななめにのびる、
二本の手はながくそろへてひきのばされる、
およぐひとの胴體はくらげのやうに透きとほる、
およぐひとのこころはつりがねのひびきをききつつ
およぐひとのたましひは月をみる。
[やぶちゃん注:『LE.PRISME』第二号・大正五(一九一六)年五月号に所収。後の「月に吠える」初版(大正六(一九一七)年二月感情詩社・白日社出版部共刊)の「およぐひと」の初出形。]