螢狩 萩原朔太郎
螢狩
愛妹(いもうと)のえりくびから一疋、
瘋癲病院の窓から一疋、
血(けち)ゑんのつかあなから一疋、
いえすの素足から一疋、
魚の脊筋から一疋、
殺人者の心臟から一疋、
おれの磨いた手から一疋、
遠い夜の世界で螢を一疋。
[やぶちゃん注:底本第三巻「拾遺詩篇」より。『異端』第二巻第二号・大正四(一九一五)年一月号掲載。「いえす」の下線は底本では傍点「ヽ」。二行目「血ゑん」はママ。老婆心ながら「血緣(けちえん)の塚穴」である。]
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螢狩
愛妹(いもうと)のえりくびから一疋、
瘋癲病院の窓から一疋、
血(けち)ゑんのつかあなから一疋、
いえすの素足から一疋、
魚の脊筋から一疋、
殺人者の心臟から一疋、
おれの磨いた手から一疋、
遠い夜の世界で螢を一疋。
[やぶちゃん注:底本第三巻「拾遺詩篇」より。『異端』第二巻第二号・大正四(一九一五)年一月号掲載。「いえす」の下線は底本では傍点「ヽ」。二行目「血ゑん」はママ。老婆心ながら「血緣(けちえん)の塚穴」である。]