栂尾明恵上人伝記 25
文覺上人、常に人に逢ひて仰せられけるは、在世の舍利弗(しやりほつ)・目連(もくれん)等は證果(しようくわ)の聖者(しやうじや)なれば、三昧解脱戒(ざんまいげだつかい)定惠(じやうゑ)の德はさる事にて、心の佛法におきて潔(いさぎよ)くけだかく優(やさ)しき事は、明惠房の心緒(こゝろばへ)に過ぎては、いかに御坐(おはしま)しけんとも覺えず」と云々。
[やぶちゃん注:この師文覚の言葉は凄い。何せ、釈迦二大弟子の智慧第一の舎利弗と神通第一の目連でさえ、明恵の仏法信仰(しんぎょう)の心の、その素直さや優しさに於いては凡そ遠く及ばぬ、と喝破しているのである。]