森のうへの坊さん 大手拓次
森のうへの坊さん
坊さんがきたな、
くさいろのちひさなかごをさげて。
鳥のやうにとんできた。
ほんとに、まるで鴉(からす)のやうな坊さんだ、
なんかの前じらせをもつてくるやうな、ぞつとする坊さんだ。
わらつてゐるよ。
あのうすいくちびるのさきが、
わたしの心臟へささるやうな氣がする。
坊さんはとんでいつた。
をんなのはだかをならべたやうな
ばかにしろくみえる森のうへに、
ひらひらと紙のやうに坊さんはとんでいつた。
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森のうへの坊さん
坊さんがきたな、
くさいろのちひさなかごをさげて。
鳥のやうにとんできた。
ほんとに、まるで鴉(からす)のやうな坊さんだ、
なんかの前じらせをもつてくるやうな、ぞつとする坊さんだ。
わらつてゐるよ。
あのうすいくちびるのさきが、
わたしの心臟へささるやうな氣がする。
坊さんはとんでいつた。
をんなのはだかをならべたやうな
ばかにしろくみえる森のうへに、
ひらひらと紙のやうに坊さんはとんでいつた。