天上縊死 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿2)
屍體
天上縊死
遠夜に光る松の葉に
懺悔の淚したゝりて
遠夜の空にいちぢるき(しもしろき
つり
天上の松にくびをかけ
たて
天上の松に凍る→戀ふる→こがれ戀ふるより
光れる松の木末より
合 掌 の
さまにつるされぬ
いのれる
光れる
松を戀ふるより
天上の
いのれるさまにつるされぬ
十二、二十七、
[やぶちゃん注:底本第一巻の「草稿詩篇 月に吠える」の『「天上縊死」(原稿七種八枚)』の纏まった二つ目。「いちぢるき(しもしろき」の「ぢ」と丸括弧トジルの欠落はママ。取り消し線は抹消を示す。「→」の末梢部分は、ある語句の明らかな書き換えがともに末梢されたことを示す。「つり」と「たれ」、「合掌の」と「おのれる」、「光れ」と「天上の」はそれぞれ、原稿では上または下の詩句に並置されてある。最後のは十二月二十七日のクレジット。「月に吠える」初版は大正一一(一九二二)年三月発行であるから、大正一〇(一九二一)年以前である。
なお、これが私が先に犀星の「月に吠える」の跋「健康の都市」の注で示唆した草稿である。「天上の松に凍る」という犀星の引用する「凍れる松が枝」という同じイメージが一瞬、朔太郎の詩想を過っていることが分かる。
抹消部を除去すると、
*
天上縊死
遠夜に光る松の葉に
懺悔の淚したゝりて
遠夜の空にいちぢるき(しもしろき
つり
天上の松にくびを
たて
天上の松に戀ふるより
合 掌 の
さまにつるされぬ
いのれる
光れる
松を戀ふるより
天上の
いのれるさまにつるされぬ
十二、二十七、
*
となる。]

