はにかむ花 大手拓次
はにかむ花
黄金(こがね)の針のちひさないたづら、
はづかしがりのわたしは、
りやうはうのほほをほんのりそめて、
そうつとかほをたれました。
黄金(こがね)の針のちひさないたづら、
わたしは、わたしは、
ああ やはらかいにこげのなかに顔をうめるやうに、
だんだんに顔がほてつてまゐります。
[やぶちゃん注:「にこげ」「和毛」「毳」で、鳥獣の柔らかい毛。また、人の柔らかい毛。産毛(うぶげ)のこと。私は個人的にこの言葉が大好きだが、かつて亡き母にそれを言ったら「鍋の煮焦げみたいで厭だわ」と切り返され、何だか、妙に淋しくなったのを思い出す。]