(無題) 萩原朔太郎 (「月に吠える」時代の最古草稿)
○
悲しみにたえざるものが夕べである
ああわたしはしづかに樂ギタルの胴ををかゝへながら
ああわたしはかのひと遠き低き家屋をの列を→の窓を→をさし→を遠見にをねむらしめたながめた
[やぶちゃん注:底本第三巻の「未發表詩篇」の巻頭を飾る萩原朔太郎の最古の未発表詩の一つ(大正三年頃の製作と推定される「月に吠える」時代の草稿)。無題。「たえ」はママ。取り消し線は抹消を示し、その抹消部の中でも先立って推敲抹消された部分は下線附き取り消し線で示した。「→」の末梢部分は、ある語句の明らかな書き換えがともに末梢されたことを示す。抹消部分を消去すると、
悲しみにたえざる夕べである
しづかにギタルをかゝへながら
かの低き家屋をながめた
となる。]