日輪草 大手拓次
日輪草
そらへのぼつてゆけ、
心のひまはり草(さう)よ、
きんきんと鈴(すゞ)をふりならす階段をのぼつて、
おほぞらの、あをいあをいなかへはひつてゆけ、
わたしの命(いのち)は、そこに芽をふくだらう。
いまのわたしは、くるしいさびしい惡魔の羂(わな)につつまれてゐる。
ひまはり草よ、
正直なひまはり草よ、
鈴のねをたよりにのぼつてゆけ、のぼつてゆけ、
空(そら)をまふ魚(うを)のうろこの鏡(かゞみ)は、
やがておまへの姿をうつすだらう。
[やぶちゃん注:「日輪草」拓次は標題にはルビを振らない。従ってこれを「にちりんさう」と「ひまはりさう」の孰れで読んでいるかは不明である。詩中で一貫して「ひまはりさう」と読んでおり、その可能性の方が強いとは言える。「羂」は罠に同じ意で用いている。狭義に言えば、本字は網や紐のようなもので括る罠という意である。]