(無題) 萩原朔太郎 (「天上縊死」草稿3)
(無題)〔「天上縊死」草稿の一つ〕
夕日の松に首を縊(つ)る
祈り靑ざめ懺悔をはれる人ひとり
手に妖光銀のアルバムを手にさげしが
頸に靑き蛇紐をまきつけ
額の上には
あはれあはれ
天上の松に首を縊るとらんと思ふ
合掌し懺悔おはれるひとひとり
そのはや肢體はしだれ
そのひとの眼はめしひ
松にかかれば
身肉たちどころに電光發し
あはれあはれ
夕日さんさんたるが梢につられ
この哀しむ哀しめる、
罪びとの手はあはされぬ、さげられぬ、
[やぶちゃん注:底本第一巻の「草稿詩篇 月に吠える」の『「天上縊死」(原稿七種八枚)』の纏まった三つ目。取り消し線は抹消を示す。「懺悔おはれる」の「お」はママ。抹消部を除去すると、
*
夕日の松に首を縊(つ)る
懺悔をはれる人ひとり
銀のアルバムを手にさげしが
頸に靑き紐をまきつけ
あはれあはれ
天上の松に首を縊らんと
懺悔おはれるひとひとり
はや肢體はしだれ
眼はめしひ
松にかかれば
身肉たちどころに電光發し
あはれあはれ
夕日さんさんたる梢につられ
この哀しめる、
罪びとの手はさげられぬ、
*
となる。]
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