日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第五章 大学の教授職と江ノ島の実験所 7
私は家屋内の装飾に関する、すべての事実を、記述し度いと思う。我々が往来を歩いていて通り過ぎた、明るく、風通しがよく、そして涼しい一軒の茶店のことを書き留める。天井から糸で細長い金銀の紙をつるしたのが、奇妙な効果を出していた。一寸でも風が吹くと、紙片はくるくる廻ってビカピカ輝き、非常に気持がよい。これ等の紙片は長さ三インチ、幅一インチ、約一フィートの間を置いて天井一面にぶら下っている。天井を飾るもう一つの方法は――もっとも、天井を飾ることはすくない、――大きな扇子の彩色画を以てすることである。十六フィート四方の部屋の天井に、こんな絵が二十も張ってあったが、そのある物は高価で非常に鮮かな色をしていた。日本人が天然物を便化する器用なやり方は顕著である。廊下の手摺板にいろいろな姿をした鶴を切りぬいたのがあった。また日除けには極度に紋切型にした富士と雲との絵がかいてあった(図119)。
[やぶちゃん注:「長さ三インチ、幅一インチ、約一フィートの間」それぞれ長さ約7・6センチメートル、幅約2・5センチメートル、それらの間隔は約30センチメートル相当。
「十六フィート四方」凡そ4・9メートル四方。]
洗面した時、我々は真鍮製の洗面器の横手に、木製の揚子が数木置いてあるのを発見した。それは細い木片で、一端はとがり、他端は裂いて最もこまかい刷毛にしてある。これ等は一度使用するとすてて了うものだが、使えば刷毛の部分がこわれるから、いつでも安心して新しいのを使うことが出来る(図120)。
図―121
日本の燭台にはいろいろな形のがあるが、非常に興味が深い。それは真鍮製で、床からの高さが三フィート近くもある(図―121)。
[やぶちゃん注:「三フィート」約90センチメートル。]
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