ベルガモツトの香料 大手拓次
ベルガモツトの香料
ほろにがい苦痛の滋味をあたへる愛戀(あいれん)、
とびらはそこに閉ざされ、
わたしの歩みをしぶりがちにさせる。
はりねずみの刺(とげ)に咲(さ)く美貌(びぼう)の花のように
戀情(れんじやう)のうろこをほろほろとこぼしながら、
かぎりなくあまい危(あや)ふさのなまめかしさを強(し)ひてくる。
[やぶちゃん注:「ベルガモツト」双子葉植物綱ムクロジ目ミカン科ミカン属ベルガモットCitrus × bergamia (学名では自然(交)雑種の場合、自然(交)雑種は(交)雑種の印である小文字の乗法記号 × 印を附し、種間雑種の場合はこの例のように種の前に、属間雑種の場合は属の前に附す)。以下、ウィキの「ベルガモット」によれば、ミカン科の常緑高木樹の柑橘類で主産地はイタリア・モロッコ・チュニジア・ギニア。「ベルガモット」の名はイタリアのベルガモからとも、また、トルコ語で「梨の王」の意となる“Beg armudi”からとも言われる。コロンブスがカナリア諸島で発見してスペイン・イタリアに伝えたとされる。近年のDNA解析によってダイダイ(Citrus aurantium)とマンダリンオレンジ(Citrus reticulata)の交雑種であると推定されている。ベルガモットの果実は生食や果汁飲料には使用されず、専ら精油を採取し、香料として使用される。紅茶のアールグレイはベルガモットで着香した紅茶であり、フレッシュな香りをもつためにオーデコロンを中心に香水にもしばしば使用される。なお、シソ科に同名のベルガモット(Monarda didyma。和名タイマツバナ)というハーブがある。これは葉がベルガモットの精油と良く似た香りを持つことから同じ名前を持っている。樹高は2~5メートル程になり、葉は他の柑橘類と同様、表面に光沢があり、他の柑橘類よりもやや細長い形をしていて先が尖っている。夏に芳香のある五枚の花びらを持つ白い花を咲かせる。果実は蔕(へた)の部分が出っ張った洋ナシ形か若しくはほぼ球形を成し、凹凸がある。果実の色は最初は緑色であるが、熟すにつれて徐々に黄色・橙色へと変化する。果実の果皮から精油が得られ、これを香料として使用する。果実はまだ果皮が緑色をしている十一月から黄色く熟す三月にかけて収穫され、圧搾法で抽出、黄色を帯びた精油を得る。ほかの柑橘類の精油がd-リモネンを主成分としているのと大きく異なり、ベルガモットの精油はl-リナロールとl-酢酸リナリルを主成分としする。心理効果(鎮静と高揚の両方の効果を持つ)・消化器系不調改善・皮膚殺菌作用・防虫効果を持つが、強い皮膚刺激性と光毒性を有するため日中の使用は注意が必要である、とある。この詩に相応しい印象を私は受ける。]