栂尾明恵上人伝記 36 小賢しい連中が世にみちみちて心を養う人はもういない……
又上人常に語り給ひけるは、惠學(ゑがく)の輩は國に滿ちて踵(きびす)を繼ぐと雖も、定學(ぢやうがく)を好む人世に絶えたり。行解(ぎやうげ)の知識缺けて、證道(しようだう)の入門、據(よりどころ)を失へりとぞ歎き給ひける。
[やぶちゃん注:「惠學」慧学。悟りを得るための修学である戒・定(じょう)・慧(え)の三学の一つ。真実清浄の智慧を磨く修学。
「定學」精神を集中して心を乱さない修学修練。三昧(さんまい)や禅定と同義。
「行解」(真の正しい)修行と学解(がくげ宗学上の深い知識や見識)。
「證道」聖道。悟りの道。]