鬼城句集 夏之部 繭
繭 繭搔の茶話にまじりて目盲(めしひ)かな
[やぶちゃん注:「繭搔」は「まゆかき」と読む。養蚕では春蚕(はるご)が蛹化の兆候を見せ始めると、一つ一つを拾い、蚕簿(まぶし:蚕が繭を作る際の足場にさせる人工物。ボール紙などを井桁状に組んで区画した一つに一匹を割り当てる。「蔟(ぞく)」とも呼ぶ。)に、分けて移し替える。これを「蚕の上蔟(あがり)」と呼ぶ。上蔟から一週間ほどで蚕簿から繭をもぎ取るが、これを繭搔きという。それより質・量ともに落ちる夏蚕・秋蚕は近代の産物である。かつては世界一だった日本の繭生産量は現在では最盛期の一%以下になった。]