佛蘭西薔薇の香料 大手拓次
佛蘭西薔薇の香料
まつしろな毛(け)なみをうたせて
はひまはる秋(あき)の小兎(こうさぎ)、
うさぎの背(せ)にのびる美貌(びばう)のゆめ、
ふむちからもなくうなだれてあゆみ、
つつしみの嫉妬(しつと)をやぶり、
雨(あめ)のやうにふる心(こゝろ)のあつかましさに
いろどりの種(たね)をまいて、
くる夜(よる)の床(とこ)のことばをにほはせる。
[やぶちゃん注:「佛蘭西薔薇」フランス原産の薔薇であるラ・フランス“La France”のこと。ピンクの花弁は四十五枚とも言われ、幾重にも重なる大輪である。フルーティーな香りが強い。一八六七年にリヨンの育種家ジャン=バティスト・ギヨ・フィス(Jean-Baptiste Guillot fils 一八二七年~一八九三年)により発表されたハイブリッド・ティーローズ(四季咲きで大輪一輪咲きの品種のこと。現代のバラの切り花一輪咲きは、殆んどがこの系統)第1号のバラである。本邦では明治から大正時代にかけては「天地開」と呼ばれていた。因みに、このラ・フランス誕生以前のバラを「オールドローズ」(Old Roses)、誕生以降のバラを「モダンローズ」(Modern Roses)と呼称するのだそうである。以上はウィキの「ラ・フランス(バラ)」に拠った。
上の画像は同ウィキにある
Kurt Stüber 氏の、
Species:
Rosa sp.
Family:
Rosaceae
Cultivar:
La France, Guillot Fils 1867 Image No. 165
の写真でクリエイティブ・コモンズ利用許諾作品である。]
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