耳嚢 巻之七 病犬に被喰し奇藥の事
病犬に被喰し奇藥の事
金魚をすり潰し、其所えぬれば直に快驗なす由。其證は金魚を犬猫も一切不喰(くはざる)也。是(これ)犬の嫌ひ候所、其愁ひを去(さる)事しるべしと人の語りける。
□やぶちゃん注
○前項連関:民間療法シリーズ直連関。犬による咬傷の民間療法は既に「耳嚢 巻之六 病犬に喰れし時呪の事」に既出。類感呪術的な如何にもな意味づけである。試みに金魚を漢方薬とするかどうか(してもおかしくはないが)ネット検索を掛けてみたが、どうも見つからない。見つけた方は是非、御教授を乞うものである。
・「病犬に被喰し」は「やまいぬにくはれし」と読む。「病犬」は「耳嚢 巻之六 病犬に喰れし時呪の事」の私の注を参照されたい。
■やぶちゃん現代語訳
怪しき犬に咬みつかれた際の奇薬の事
金魚を摺り潰し、咬まれた箇所に塗れば、直ちに快癒するとのこと。
その効験(こうげん)の証左はと言えば、犬猫は金魚を一切食わないことにある。
これは犬が金魚を嫌い、忌避して御座ることを証明するものである。従って、その咬傷の悪化をも、これ、防ぐことが出来るのであると理解出来よう、と人が語って御座った。
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