蛇つかひ 萩原朔太郎
蛇つかひ
わたしは蛇つかひ
女のまつ白いえりくびから
むくくり肥えた乳房
白いもりあがつた乳房にかけて
だんだん下の方へと
そろそろとしづしづとわた靑白い蛇をははしてゆく
おれはああ だんだんとそろそろと下の方へゆくにしたがひ
蛇はそつと
いんよくの眼が眼をつぶる、
長蛇がそつと瞳をとぢづる、のからだが靑くなる→むらさきになる靑ざめくなる。
[やぶちゃん注:底本第三巻「未發表詩篇」所収(三三六頁)。「むくくり」はママ。取り消し線は抹消を示し、その抹消部の中でも先立って推敲抹消された部分は下線附き取り消し線で示した。「→」の末梢部分は、ある語句の明らかな書き換えがともに末梢されたことを示す。なお、編者注によれば、題名「蛇つかひ」の上部には次の二行の記載がある、とある。
ほとばしりいづるもの
をとめの上の
「をとめ」はママ。]