鬼城句集 夏之部 新茶
新茶 宇治の茶、萬古の急須、相馬の茶碗、
美濃の柿、伊香保の盆、かぞへ來れば
なかなかに勿體なし
新茶して五ケ國の王に居る身かな
[やぶちゃん注:「萬古」三重県四日市市の代表的な地場産業である萬古焼(ばんこやき)。万古焼とも書く。葉長石(ペタライト:耐熱性に富むケイ酸塩鉱物。)を使用して造られ、陶器と磁器の間の性質を持った半磁器(「炻器(せっき)」とも呼ぶ)。耐熱性に優れ、紫泥の急須や土鍋で知られる(ウィキの「萬古焼」に拠る)。
「相馬」福島県浜通り北部の浪江町大堀で焼かれる陶器。大堀相馬焼。青ひび(鈍色の器面に広がる不定型な罅で、後にひびに墨を塗り込むために黒く見える)・二重焼(ふたえやき:轆轤成形で外側と内側を別に作り、焼成前に被せる手法でこれで製した湯呑茶碗は冷めにくいされる大堀相馬焼に特異的な製法)・走り駒意匠などの特徴を持つ。二〇一一年三月の福島第一原子力発電所事故によって福島第一原発から一〇キロメートル圏内に位置していた大堀は強制退去を余儀なくされ、協同組合諸共、二本松の小沢工業団地内に移転させられている。(ウィキの「大堀相馬焼」に拠る)。]