耳嚢 巻之七 鳥の餌に虫を作る事
鳥の餌に虫を作る事
籾(もみ)を壹貮合たきて地上へ置(おき)、其上へぬれ菰(ごも)を懸置(かけおけ)ば不殘(のこらず)虫に成る。冷粥(ひえがゆ)を右の通りなせば、はさみ虫といへる物になる由。穀氣の變ずるや、又集(あつま)るや、相違なき事のよし、人の語りぬ。
□やぶちゃん注
○前項連関:何となく繋がっては読める。トンデモ化生説を信じていた(少なくとも否定していない)根岸がちょっとだけ意外である。
・「冷粥」岩波のカリフォルニア大学バークレー校版では「ひえがゆ」と平仮名表記で、長谷川氏は注して、『稗の粥』とされる。この方が自然。たかが鳥の餌である。米の粥では勿体ないし、稗は救荒作物として栽培され、実を食用やそのままでも鳥の飼料などに現在もするから、ここは敢えて長谷川氏の注を採って訳した。
・「はさみ虫」知られた昆虫綱ハサミムシ目 Dermaptera の類、またはクギヌキハサミムシ亜目ハサミムシ科ハサミムシ Anisolabis maritime。
■やぶちゃん現代語訳
鳥の餌に虫を作る事
稲籾を一、二合炊いて、地面の上に置き、その上へ濡らした菰(こも)を懸けておけば、稲籾は残らず鳥の餌になる虫と変ずる。稗を炊いた粥を同じようにすると、鋏虫(はさみむし)と申す、やはり鳥の好んで啄む虫と変ずる由。
穀物の気が化生して別種のものに変じ、またその気の集合致いて生き物と化す、これ、全く以って事実に相違なきことなる由、さる人の語って御座った。
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