大橋左狂「現在の鎌倉」 18 長谷の大佛
長谷の大佛 鎌倉停車場よりは二十丁ある。江の島電車に乘れば長谷の停留所より五丁御輿ケ嶽の西麓にある。大異山廣德寺と稱し大佛は奈良の大佛と共に吾國著名の銅像である。丈三丈三尺、面長(めんてう)八尺五寸、眼長四尺、耳長六尺六寸、口徑三尺二寸、親指廻り三尺二寸、胴圍(どうまはり)十六間二尺、膝廻り五間三尺ある。胎内に觀音及阿彌陀尊を安置してある。遊覽者は胎内拜觀料二錢を投じて胎内に入る事が出來る。建長四年に鑄造されたとの事であるが如何に當時の美術が進歩してあるかに一驚を喫するのだ。其微笑の温顏勝くるが如く寛容の相以て參詣者を迎ふるは實に明治聖代の如何に大平なるかを表示して居る。
[やぶちゃん注:「丈三丈三尺……」以下の数値をメートル換算しておく。
丈三丈三尺 一〇・〇 メートル
面長八尺五寸 二・五七 メートル
眼長四尺 一・二一 メートル
耳長六尺六寸 二・〇 メートル
口徑三尺二寸 〇・九六 メートル
親指廻り三尺二寸 〇・九六 メートル
胴圍十六間二尺 二九・六九 メートル
膝廻り五間三尺 一〇・〇 メートル
因みに、現在の高徳院の公式サイトのデータを示しておく。
総高(台座を含む) 一三・三五 メートル
仏身高 一一・三一二 メートル
面長 二・三五 メートル
眼長 一・〇〇 メートル
口幅 〇・八二 メートル
耳長 一・九〇 メートル
眉間白毫直径 〇・一八 メートル
螺髪(頭髪)高 〇・一八 メートル
螺髪直径 〇・二四 メートル
螺髪数 六五六 個
仏体重量 一二一 トン
数値のずれよりも、計測する目の付け所が異なっており、本作の方が明らかにより庶民的な興味を本位としていて面白い。]
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