鬼城句集 夏之部 蚊柱
蚊柱 蚊柱や吹きおろされてまたあがる
[やぶちゃん注:「蚊柱」水辺で、双翅目糸角亜目カ下目ユスリカ上科ユスリカ科 Chironomidae の形成するものが有名(老婆心ながらユスリカの♀は刺さない)であるが、広くカの仲間や他の双翅類(ガガンボダマシ科やヒメガガンボ科)が軒下などに群れて柱状に長く延び上がり、上下しながら飛ぶ生殖行動に伴う現象をいう。刺すカ科の仲間でもアカイエカ・コガタアカイエカなどが顕著な蚊柱を作る。七~八月ころの夕方や朝、羽音をたてながら二〇~五〇匹時には数百匹の♂が群飛する(則ち、本来の蚊柱を形成するのは♂であるから蚊柱の蚊は刺さない)と、そこに♀が入ってきて交尾が行われ、蚊柱は凡そ四、五十分で消失する。♂は♀の入来を♀固有の羽音で感知するといわれている。蚊の産卵には水が必要で、蚊には低気圧が近づいて湿度が高まり、蒸し暑くなると本能的に生殖活動を行うプログラムがなされているらしく、蚊柱が立つと一日二日のうちに雨の降ることが多いとも言われる(以上は平凡社「世界大百科事典」及び個人サイト「観天望気」の「蚊柱立てば雨」を一部参考にさせて頂いた)。]