日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第七章 江ノ島に於る採集 12 筆は直角に持つ!
日本人は漢字で文章を書くが、優秀な学生は三千字、四千字を知っている。これ等全部に書かれる時の形がある。日本人は同時に、四十八字のアルファベットを持っていて、それで言葉を発音通りに綴る。だが私はこのことを余りよく知らないから、興味を持つ読者は、ヘップバーンの「日英辞典」の序言を参照されるとよい。漢字の多くは、一つの点や線によって相違する。外山教授は大学へ手紙を出して網をたのんでやったが、先方はその漢字を、私が沢山持っている綱と読み違えた。日本人の手紙には Dear Sir も Dear friend もなく、突然始る。物を書く時には、図177のように筆を垂直に持つ。
[やぶちゃん注:モースは恐らく頭語が改行されない本邦の手紙を見て、それがぶっきらぼうに直ちに要件を記しているように見えたものであろう。若しくは、モースが多く実見した多くの事務手続き上の書状の「前略」の意味を聴いてそう判断してしまったものかも知れない。
『ヘップバーンの「日英辞典」』原文は“Hepburn's "Japanese and English Dictionary."”。これは明治学院の創始者でローマ字のヘボン式で知られる、米国長老派教会系医療伝道宣教師ジェームス・カーティス・ヘボン(James Curtis Hepburn 一八一五年~一九一一年)が一八六七年にロンドンで出版した辞典であろう。ヘボンは安政六(一八五九)年十月に来日、モースが来日した際もまだ日本にいた。彼は明治二五(一八九二)年十月に妻の病気を理由に離日したが、実にその滞在期間は三十三年に及んだ。実に日本の近代化を蔭で支えてくれた外国人の一人であった。]
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