教育? 萩原朔太郎
●教育?
教育は、猿を人間にしない。ただ見かけの上で、人間によく似た樣子をあたへる。猿が、教育されればされるほど、益〻滑稽なものに見えてくる。
もとより猿に關しては、初めの目的がそれである。充分の愛矯であり、道化者であることが、猿芝居における、教育の最終の理想である。これが人間の場合にあつては、別の理想が考へられてる。但し恐らくは、ただの理想にすぎないところの、ずつと超自然的な目的が!
人間どもの、悲しき夢の一つである。
[やぶちゃん注:昭和四(一九二九)年十月第一書房刊のアフォリズム集「虛妄の正義」の「社會と文明」より。]
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