禿鷲 六首 中島敦
禿鷲
プロメトイス苛(さいな)みにけむ禿鷲も今日は寒げに肩を張りゐる
アンデスの巖根(いはね)嶮(こゞ)しき山の秀(ほ)の鋭どき目かもコンドルの目は
ジャングルに生ふる羊齒草(しだくさ)えびかづら間なくし豹はたちもとほるを
短か手(で)を布留(ふる)の神杉(かんすぎ)カンガルー春きたれりと人招くがに
春の陽に汝(な)が短か手を千早ぶるカンガルーは耳を搔かんとするか
去年(こぞ)見しと同じき隅(すみ)に石龜は向ふむきたり埃を浴びて
[やぶちゃん注:「河馬」歌群の一。
「プロメトイス」プロメテウス。
「えびかずら」太字は底本では傍点「ヽ」。]

