少年とタコノキ 三首 中島敦 (「小笠原紀行」より)
更に奧村を行けば十歳ばかりの少年
馴々しく話しかけわが爲に章魚木の
實をとらむとて木に攀づ
章魚木(たこのき)にのぼる童の眼は碧く鳶色肌の生毛(うぶげ)日に照る
ナイフ光り實は落ちにけり少年もとびおりたれど砂にまろびぬ
根上りし章魚木の東根に背を凭(も)たせやゝに汗ばむ少年の顏
[やぶちゃん注:前書は一文前が連続であるが、適宜改行した。先に注で示した通り、タコノキは夏に数十個の果実が固まったパイナップル状の集合果をつけ、果実は秋にオレンジ色に熟し、茹でて食用としたり、食用油を採取する原料とする。この記載(ウィキの「タコノキ」に拠る)では季節的に(中島敦の来島は三月下旬)どうかと思ったが、こちらの方の三月十六日附(二〇〇九年)の小笠原旅行中のブログに、熟したタコノキの実がそこここにあり、実のなっている画像も示されている。]

