防風林にて 五首 中島敦 (「小笠原紀行」より)
防風林にて 五首
立枯の防風林のヤラボの根根上り著(しる)く歩き難しも
[やぶちゃん注:既出の「タマナ」(ツバキ目オトギリソウ科テリハボク
Calophyllum inophyllum の小笠原諸島での地方名)の南西諸島での方言名。ヤラボ・ヤラブ・ヤラブギー・ヤナブ(沖縄広域)、ヤロー(竹富・宮古・多良間)などとも呼称するが、原義は不明。]
暫(しま)しくを防風林にまどろみぬ覺(さ)めておどろく海の蒼さや
目覺むればヤラボの影のだんだらの縞に染められわがい寢てゐし
海の上を靑き炎(ほのほ)が燃えゆれて今し日は午後に移らんとする
顫へ光る蒼さの中を一文字カヌーにかあらむ過(よぎ)り馳せくる

