鵜の歌 四首 中島敦
鵜の歌
豆州稻取海岸にて
山直ちに海に崩れ入る岩の上に飛沫浴びつゝ鵜は立ちてゐる
我が投げし石はとどかず崖下の氷雨(ひさめ)しぶかふ荒磯の鵜に
たちまちに海黑み來ぬ巖(いは)の上の鵜の聲風に吹消されつゝ
雨まじり吹く風強み岩の鵜は翼(つばさ)收めてこらへてをるも
[やぶちゃん注:「河馬」歌群の一。昭和一二(一九三七)年の手帳日記の四月四日(日)の条に『夕方、熱海ニ行ク』とあり、翌日帰浜している。位置的にはややずれるが、東伊豆に行った記載は他には同年中にないので一応、掲げておく。]

