鬼城句集 夏之部 金魚 / 蛍
金魚 金魚の王魚沈ンで日暮るゝ
[やぶちゃん注:「金魚の王」蘭鋳(ランチュウ)のことか。私は想像しただけで、あの畸形身体には虫唾が走る。]
螢 さみしさや音なく起つて行く螢
[やぶちゃん注:名句と思う。]
悼吾雲兄愛兒
螢來よ來よ魂も呼ンで來よ
[やぶちゃん注:「來よ來よ」の後半は底本では踊り字「〱」。同じ夏の部の「蚊帳」の同じ「悼吾雲兄愛兒」という前書を持つ「枕蚊帳の翠微に魂のかへり來よ」の句の注を参照されたい。]
市中になぐれて高き螢かな
[やぶちゃん注:「なぐる」には、横の方へそれる、の他に、おちぶれる・身を持ち崩す、売れ残る、仕事にあぶれる、といった意味がある。無論、横にそれて飛び消えてゆく嘱目のそれであるが、「市中」というロケーションの特異性が、蛍の持つ「さみしさ」と相俟って、「なぐれて」の意をそれ以外の意味をもずらして感じさせているようにも思われる。「村上鬼城記念館」公式サイト「鬼城草庵」の「鬼城俳句と自画讃」で雷神の絵を添えた短冊が見られる。]
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