あいんざあむ 萩原朔太郎
あいんざあむ
じめじめした土壤の中から、
ぽつくり土をもちあげて、
白い菌のるいが、
出る、
出る、
出る、
この出る、菌のあたまもが、
まつくらの林の中で、
ほんおり光る。
すこしはなれたところから、
しつとり濡れた顏が、
ぼんやりとみつめえ居た。
[やぶちゃん注:底本第三巻「未發表詩篇」より。取り消し線は抹消を示す。「るい」はママ。題名の「あいんざあむ」とはドイツ語の形容詞“einsam”で「寂しい」の意。]