ばらのあしおと 大手拓次
ばらのあしおと
ばらよ おまへのあしおとをきかしておくれ、
さわがしい雨(あめ)のみづおとのするまよなかに、
このかきむしられるわたしの胸(むね)のなかへ
おまへのやさしいあしおとをきかしておくれ。
ちひさく しろく さびしいかほのばらのはなよ、
わたしのたよりない耳へ、
おまへのやはらかなあしおとをきかしておくれ。
とほく とほく ゆらめいてゐるばらのはなよ、
おまへのまぼろしのあしおとを
おとろへてゆくわたしの胸へきかしておくれ。
« 鬼城句集 夏之部 泳ぎ | トップページ | フランツ・カフカ「罪・苦痛・希望・及び眞實の道についての考察」中島敦訳 7 »