眞黑な水の上の月 大手拓次
眞黑な水の上の月
不安に滿ちた心を化粧する惡魔、
善と美との妖精、
孤獨の繩梯子(なははしご)をのぼつてゆく道心、
生きた毛皮のうへに魂の菓子をつくる世相、
わたしは空(そら)を舞ふミイラのやうに
茫漠とした木盃(もくはい)をうかべて、
奇蹟の榮光に身をかがませ、
うつむきながら、
手足(てあし)をもぎとられたひとつの流れのなかに、
まつくろなかげをおとしてしづむ眞夜中(まよなか)の月。
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眞黑な水の上の月
不安に滿ちた心を化粧する惡魔、
善と美との妖精、
孤獨の繩梯子(なははしご)をのぼつてゆく道心、
生きた毛皮のうへに魂の菓子をつくる世相、
わたしは空(そら)を舞ふミイラのやうに
茫漠とした木盃(もくはい)をうかべて、
奇蹟の榮光に身をかがませ、
うつむきながら、
手足(てあし)をもぎとられたひとつの流れのなかに、
まつくろなかげをおとしてしづむ眞夜中(まよなか)の月。