日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第七章 江ノ島に於る採集 8 犬・川・力士の四股名
犬の名には赤、黒、白等の色を用いるが、犬は自分の色を知っているらしく思われる! 馬の名で普通なのは「ハルカゼ」(春の風)、「キヨタキ」(清い滝)、「オニカゲ」(悪魔の影)。川の中には「早い」川や、「犀」川や、「大きな井戸」の川や、「天の竜」の川やその他がある。相撲取は、この国では非常に尊敬されるが、「電光」「海岸の微風」「梅の谷」「鬼の顔の山」「境界の川」「朝の太陽の峰」「小さな柳」等の名を持っている。舟にもまた、極めて小さいもの以外は、皆一風変った名前がつけてある。
[やぶちゃん注:「電光」原文“Thunderbolt,”。雷電震右エ門(らいでんしんえもん 天保一三(一八四二)年~明治一七(一八八四)年)。彼は伝説の四股名「雷電」を襲名した最後の力士で、この明治一〇(一八七七)年一月場所で大関に昇進していた。
「海岸の微風」原文“"Seashore Breeze,”。何となく分る四股名ではあるが不詳。識者の御教授を乞うものである。
「梅の谷」梅ヶ谷藤太郎(うめがたにとうたろう 弘化二(一八四五)年~昭和三(一九二八)年)。明治一七(一八八四)年、第十五代横綱となった。
「鬼の顔の山」明治初年の第十二代横綱に鬼面山谷五郎(きめんざんたにごろう、文政九(一八二六)年~明治三(一八七一)年)がいる。
「境界の川」境川浪右衛門(さかいがわなみえもん 天保一二(一八四一)年~明治二〇(一八八七)年)。明治元(一八六八)年に大関、明治一一(一八七八)年に第十四代横綱となった。
「朝の太陽の峰」朝日嶽鶴之助(あさひだけつるのすけ 天保一一(一八四〇)年(天保九年とも)~明治一五(一八八二)年)。この明治一〇(一八七七)年十二月場所で大関に昇進している。
「小さな柳」幕末の名大関に小柳常吉(こやなぎつねきち 文化一四(一八〇七)年~安政五(一八五八)年)がいる。]
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