六月の雨 大手拓次
六月の雨
六月はこもるあめ、くさいろのあめ、
なめくぢいろのあめ、
ひかりをおほひかくして窻(まど)のなかに息をはくねずみいろのあめ、
しろい顏をぬらして みちにたたずむひとのあり、
たぎりたつ思ひをふさぐぬかのあめ、みみずのあめ、たれぬののあめ、
たえまないをやみのあめのいと、
もののくされであり、やまひであり、うまれである この霖雨(ながあめ)のあし、
わたしはからだの眼といふ眼をふさいでひきこもり、
うぶ毛(げ)の月(つき)のほとりにふらふらとまよひでる。
[やぶちゃん注:「霖雨(ながあめ)」は底本ルビでは「な あめ」。創元文庫版で訂した。]