『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 18 その他の旅館
◎其他の旅館
神社鳥居内にすべて七軒の旅館あり、そのうち惠比壽、金龜、岩本の三旅館は別項記載する所あれば、重ねては案内せず、他の四戸は。讃岐屋八郎右衛門、江戸屋忠五郎、北村屋忠右衛門、さかゐや平十郎、いづれも麓鳥居内の左右に店を列ねて、ひとしく凉しき處に客間を設けて、富士を窓に入れて作れるもあり松と岩とを軒にして葺きおろしたるもあり、江の島の風光を我かものにして、閑靜を致(むね)としたる、構造の澁き、お手輕向、それそれの特色自慢もあるべし、夏を餘所なる凉みの場所なれば潮風心地よく浴衣を透(とほ)し、滿目爽凉秋の如く、鮮鱗潑溂として膳に上るの快、其孰か保養或は一酌に適するかは讀者の所感に任かす。
[やぶちゃん注:二〇一三年現在、江の島の旅館は岩本楼と恵比寿屋の二軒のみである(他に後発と思われる民宿が七軒営業しているということにはなっている)。]
●江の島旅人宿の宿料及晝飯料の規定
定
宿 料
一甲上 金壹圓 一乙上 金六十錢
一甲中 金八十錢 一乙中 金五十錢
一甲下 金七十錢 一乙下 金四十錢
晝飯料
一甲上 金八十錢 一乙上 金五十錢
一甲中 金七十錢 一乙中 金四十錢
一甲下 金六十錢 一乙下 金三十錢
等外 金二十錢
右協議決定候事
江の島旅人宿
明治三十年七月 正 行 事印
[やぶちゃん注:昼食貸席料が異様に高いのが解る。]