『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 14 獵師町
●獵師町
島の東岸に漁村あり。東西二區に分居(ぶんきよ)せり。入口石の鳥居より東に當り。島人の所謂埋地(うめち)を經てこゝに到る。
[やぶちゃん注:以下の聞き書きは、底本では全体が一字下げ。]
聞く今より十年前。横面とて東西兩町の要路なりし所。霖雨(りんう)の爲めに壞落(くわいらく)し。其の後海を埋め地を開きたるにより。埋地とは通稱するに至れり。
戸數九十五戸。北條氏留浦の印判を與へ。他領の漁者猥(みだ)りに入へからさる旨。北條陸奥守氏照掟書(おきてがき)を出せり。又慶長五年六月。德川家康公。此海岸に到られし時。漁者(ぎよしや)生魚を網(あみ)して奉りしに因り。銀若干(そこばく)を賜はりしことあり。
[やぶちゃん注:最後の歴史的事実は「●江島」パートで既注済み。
「横面」は「よこつら」又は「よこづら」と読むものと思われる。
「霖雨」何日も降り続く雨。長雨。]
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