霧・ワルツ・ぎんがみ――秋冷羌笛賦 猶太人夫婦相合傘の歌 三首 中島敦
(以下三首 相合傘の歌)
猶太(ユダヤ)びと太れる妻と敷島の大和の傘を借りてさすかも
番傘の相合傘は年老いし猶太(ゆだや)の夫婦(めをと)ルパシカ濡るゝ
[やぶちゃん注:「ルパシカ」(Рубашка)は元来はウクライナの農民の民族衣装。ゆったりしたブラウス風の上衣で腰をひもで締めて着る。立ち襟で左寄りに前開(あ)きがあり、襟や袖口などをロシア風刺繡で飾る。ナチス・ドイツのユダヤ人迫害は知られるが、ロシア・ソヴィエトでもポグロムと称する古くからのユダヤ人迫害の歴史があった。この夫婦もかの地から逃避行をして来た者達ででもあったか。]
豚に似る妻と番傘さしたれど身は濡れにつゝあはれシャイロック

