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2013/08/11

聘珍樓雅懷 十四首 中島敦

    聘珍樓雅懷
冬の夜の聘珍と聞けば大丈夫ますらをと思へる我も心動きつ
國つ仇と懲し伐つとふ國なれどからの料理の憎からなくに
うましもの唐の料理はむらぎもの心のどかに食ふべかりけり
白く濃き唐黍たうきびスウプ湯氣立ちてあら旨げやなうす謄うく
白く漉き唐黍スウプするするとへば心もなごみけらずや
[やぶちゃん注:「するする」の後半は底本では踊り字「〱」。]
家鴨いへがもの若鳥の腿の肉ならむ舌にとけ行くやはらかさはも
大き盤に濛々として湯氣けむり立つ何のタン(スウプ)ぞもいざ味見あぢみせん
[やぶちゃん注:特異な表記法。音数律から湯は「タン」と読ませ、丸括弧本文ポイント表記の「スウプ」は視覚的解説である。]
肉白き蟹の卷揚まきあげかろくうましうましとわがしにけり
[やぶちゃん注:「うましうまし」の後半は底本では踊り字「〱」。]
かの國の大人たいじんのごとおほらけくすべきものぞ紅燒鯉魚ホンシヤウリギヨ
[やぶちゃん注:「紅燒鯉魚」広東料理の定番である鯉の葱と生姜の鯉丸一尾の醤油煮。言わば筒切りにしない鯉濃こいこくであるが、以下の歌でも分るように甘酢餡かけで食べる。]
甘く酸き匂に堪へで箸とりぬ今宵の鯉の大いなるかな
甘酸かけて食ひもて行けば大き鯉はやあらずけり未だかなくに
[やぶちゃん注:「饜」は満腹するの意。]
冬の夜の羊肉ひつじの匂ふとかげば北京のみやこ思ほゆるかも
いさゝかにいやしとはへどなかなかに棄てがたきものか酸豚の味も
みんなみの海に荒ぶる鱶の鰭に逢はで久しく年をへにけり
[やぶちゃん注:「聘珍樓」「へいちんろう」と読む。横浜中華街にある創業明治一七(一八八四)年の日本最古の中国料理屋号を持つ老舗広東料理店。一首目に関わって述べておくと、「聘」は迎えるところの、「珍」は尊ぶところの心の意であるが、別に「聘」には賢者を招いて用いるの意、「珍」には貴重・高貴の謂いがあることから「良き人・素晴らしき人の集まり来たる館」の謂いも含む(ウィキの「聘珍樓」を一部参考にした。]

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