赤と白と靑と黄の歌――福島コレクション展観 五首 中島敦
赤と白と靑と黄の歌
――福島コレクション展觀――
[やぶちゃん注:「福島コレクション」美術評論家で収集家であった福島繁太郎(明治二八(一八九五)年~昭和三五(一九六〇)年)のコレクション。パリに長く定住し、ドラン・ルオー・ピカソ・マティス等の現代絵画の作家たちの優れた作品を蒐集、一時は百点以上に達したが、これを「福島コレクション」と称する。この大部分は日本にもたらされ、日本現代美術史上に大きな影響を与えたとされる(昭和三〇(一九五五)年四月の『みづゑ』臨時増刊「旧福島コレクション」には七十六点が掲載されている)。また彼はパリで評論家ワルドマー・ジョルジュを主幹とした高級美術雑誌『Formes』を昭和三(一九二八)年から数年発行し、新人を発見することに努めた。これは戦後の銀座での「フォルム画廊」の経営で、有望な新人を育成したことに繋がっている(以上は主に東京文化財研究所発行「日本美術年鑑」に拠った)。]
モディリアニの裸婦(らふ)赤々と寐そべりて六月の午後を狂ほしく迫る
[やぶちゃん注:これは恐らく旧福島コレクションのモディアーニの「髪をほどいた横たわる裸婦」(一九一七年作)である(リンク先は大阪市立近代美術館のギャラリー・ページ。画像有)。]
ユトリロの白をつくづく目守(まも)りけり病院横の建物の白
ユトリロの心に栖みし白き影人無き街のこの白き影
[やぶちゃん注:これらの作品は同定出来なかったが(私は所持しないが、「旧福島コレクション」(美術出版社一九五五年刊)で同定は可能)、小熊秀雄の「大観とユトリロ」の中に、『福島コレクションでみた展覽会で見たユトリロは、その作品の制作方法の精神的段階が、あまりに日本的であつたので、私は吃驚りしたことがある。しつとりとしたやり方なのである。日本の洋畫家が、投げつけるやうに油繪をぬつたくる方法とは、まるでちがつてゐた。』という評言があるのを見出したので附言しておく。]
ルヲー畫(か)く靑き道化もキリストもある日の我に似たりと思ふ
[やぶちゃん注:「道化」の方は現在、ブリジストン美術館蔵の「道化」(一九二五年作)である。同美術館には同じルオーの「郊外のキリスト」(一九二〇~一九二四年作)が収蔵されているが、後者はこれか?(リンク先は同美術館公式サイト内のコレクション画像)。]
ふらんすの若き女が黄の縞の衣裳(きぬ)の明るさマティス憎しも
[やぶちゃん注:太字「ふらんす」は底本では傍点「ヽ」。特徴的な絵のようだが、ネットの画像検索では行き当たらない。本歌群総ての絵画作品について識者の御教授を乞うものである。]

