日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第八章 東京に於る生活 7 人形焼?
今日裏通を歩いていたら(ここの往来はみな裏通みたいだ)パンみたいな物を、子供のために、山椒魚(図199)その他の奇妙な生き物の形に焼いたものがあった。聞く所によると、東京のある場所では、菓子を蟾蜍(ひきがえる)、虫、蜘蛛等のいやらしい物の形につくつているそうである。それは実に完全に出来ていて、ひるまずに食った人が勝負に勝つのだという。また砂群菓子や寒天を使用して、実に鼻持ちのならぬような物をつくり上げる正餐もあるそうである。これ等はすべて食えば美味いのだが、むかつきやすい胃袋にとっては、とても大変な努力を必要とする。
[やぶちゃん注:これは人形焼のようなものか。]
町の子供達は昨今、長い竹竿を持って蜻蛉(とんぼ)を追い廻している。また蜻蛉や螇蚚(ばった)の胴体に糸をむすび、その糸を竿につけて、これ等が小さな紙鳶(たこ)ででもあるかのように、飛ばせているのもある。
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