鬼城句集 夏之部 虎耳草
虎耳草 高崎郊外
虎耳草うゑる穴あり聖石
[やぶちゃん注:「虎耳草」「こじさう(こじそう)」と読むが、ここは「ゆきのした」と訓じていよう。ユキノシタ目ユキノシタ科ユキノシタ
Saxifraga stolonifera の民間薬としての呼称である。葉を炙って腫れ物・凍傷・火傷などの消炎に用い、葉の搾り汁は中耳炎や漆等によるかぶれ・虫刺され・小児のひきつけ・風邪に効果があるとし、乾燥させた茎や葉は煎じて解熱・解毒に利用するともある(以上はウィキの「ユキノシタ」に拠る)。「聖石」は群馬県高崎市聖石町にある地名と古跡。弘法大師が腰かけたと伝承される石が残る。迷道院高崎氏のブログ「隠居の思ひつ記」の「鎌倉街道探訪記(21)」で古写真や現況を見ることが出来る(そのコメント欄を見るとこの石は回転しながら上流に移動するという言い伝えがあるらしい)。この句はまさに、この古写真にある聖石の窪みにユキノシタが可憐に植わっているさまを詠んだもののように私には思われる。]
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