鬼城句集 夏之部 浮巣
浮巣 親鳥の高浪に飛ぶ浮巣かな
鳰の巣の見え隱れする浪間かな
[やぶちゃん注:「浮巣」鳥綱カイツブリ目カイツブリ科カイツブリ
Tachybaptus ruficollis の雌雄が、水辺近くの水生植物や杭などに、水生植物の葉や茎を組み合わせて営巣する逆円錐状を成した巣。以下、ウィキの「カイツブリ」によれば、本邦での繁殖期は四月から七月で、雌雄交代で抱卵(抱卵期間は二十日から二十五日)する。卵は最初は白いが次第に汚れて褐色となる。親鳥が巣を離れる際には卵を巣材で隠す習性を持つ。雛は早成性で孵化後約一週間で巣から出て泳げるようになる。小さいうちは親鳥が背中に乗せて保温をしたり、外敵からの保護を行う。雛を背中に乗せたままで潜水することもある。雛は自分で採餌できるようになるまで親鳥より餌の捕えかたを教えられ、その後追われるようにして独立を促され、凡そ六十日から七十日で巣立ち、生後一年で性成熟する。なお、リンク先では非常に詳しい標準和名カイツブリの語源を分析して面白い(古語の解釈には若干疑問があるが)いが、この「かいつぶり」という和名は室町以降みられるになったもので、二句目の古名「鳰」(「にほ(にお)」)は「水に入る鳥」の意の転訛、とある。奈良時代には「にほどり」「みほとり」と称されており、漢字「鳰」もその意を示す会意の国字である。因みに琵琶湖の別名「鳰海(にほのうみ)」は琵琶湖がカイツブリやカイツブリ目の構成種が多く棲息したことによる(私は実際の浮巣を見たことがないので、以下に浮巣と子育ての様子を撮った動画のリンクを這っておく)。]