『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 20 人力車運賃表
●人力車賃錢表
國道一人乘一人挽一里金拾錢 一時間貮拾錢
岐道同上 一里金拾三錢 一時間貮拾四錢
一 一人乘一人挽一日雇金一圓半日雇金六拾錢以内とす
一 駐車一時間金六錢
渡船賃橋錢は乘客より支辨するものとす
左の場合に於ては定額賃の三倍增とす
一 夜間暴風雨大雪惡路傳染病又は危險の場所出車の時
一 片瀨州鼻より藤沢停車場まで拾七錢
一 同所より鎌倉大佛まで金貮拾八錢
一 同所より鎌倉停車場まで三拾四錢
一 同所より鎌倉八幡前まで三拾八錢
右警察署の認可を得て確定候也
明治三十一年五月十日 鎌倉郡人力車營業組合頭取
[やぶちゃん注:ネット上の情報を綜合すると、明治三〇(一八九七)年頃の物価は凡そ現在の3800倍相当とあるので1円は凡そ3800円換算となる。因みに、先に電子化した本書から十四年後の出版になる大橋左狂の「現在の鎌倉」(明治四五(一九二一)年刊)の「人力車」の項と比較すると(区間運賃は江ノ電片瀬停車場からの運賃であるので同所から片瀬洲鼻までの七銭を加算して比較する)、
「岐路に入る一人乘一人輓(びき)一里に付き二十五錢以内とし、一日雇上げ規定十時間以内は一日二圓三十錢、半日雇上げ五時間以内は八十錢、一時間雇上四十錢、半時間二十五錢、一時間待賃八錢」
という定款では、
普通道運賃1里 13銭 → 25銭
一日貸切 1円 → 2円30銭
半日貸切 60銭 → 80銭
一時間待 6銭 → 8銭
と変化し、区間料金では、
片瀬州鼻―藤沢停車場 17銭 → 32銭(これはもう少し安いかもしれない)
片瀬州鼻―鎌倉大仏 28銭 → 49銭
片瀬州鼻―鎌倉停車場 34銭 → 57銭
片瀬州鼻―八幡前 38銭 → 72銭
となっている。概ね倍以上であるが、1円の価値が1200円から2500円程度まで減衰しているから特異な変異とは思われない。但し、定款の変化に比べて、区間運賃は有意に割高になっている感じはする。
「岐道」とは国道から分岐するその他の県道その他私道を含む総ての道という意味か。整備上、国道に劣るから賃金が高いのであろう。]
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