耳嚢 巻之七 諸物制藥有事 その二
又
無益なる事なるが、火打石を少(ちい)さくなすには、草ほふきを以(もつて)たゝくに妙也。
□やぶちゃん注
○前項連関:「諸物制藥有事」その二。草箒を用いるというのは、単に玄能や木槌で叩くと一点に力が加わるだけで、火花も散ってよろしくないのを、草箒を被せた上から叩くと力が分散し、火花も出ずに小さく砕けるといったことではなかろうか?
・「草ほふき」草箒。仮名遣は正しくは「くさはうき」「くさばうき」である。乾燥させたナデシコ目ヒユ科バッシア属ホウキギ(ホウキグサ) Bassia scoparia の茎や枝を束ねて作った箒のこと。小さな刷毛大のものもある。
・「以たゝくに妙也」岩波のカリフォルニア大学バークレー校版では、『以たゝけば砕くる事妙なるよし』とある。その方が分かりがよいので、ここの訳はこちらを採る。
■やぶちゃん現代語訳
諸物には相応に対象の属性を制する薬効があるという事 その二
あまり役に立つ知識ではないが、大きな火打石を小さく割ろうと思う時には、草箒を被せて叩くと、妙なくらい容易に砕けるとのこと。
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