『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」より江の島の部 19 産物
●産物
海鮮の産多きが中に鰹魚。※1※2(いるか)、烏賊魚、鰒、榮螺子、海老、水草には海苔、海雲(もづく)、鹿尾菜(ひじき)等(とう)あり、就中鮑の粕漬、もくずは都人士に愛(め)でられ、又櫻貝(さくらがひ)と號する花貝を産す、其色花辨に似て甚だ美なり。兒童の玩具を製造す。
[やぶちゃん注:「※1」=「魚」+「孚」。「※2」=「魚」+「布」。「もくず」はママ。「もづく」の誤植と考えてよい。
「櫻貝」狭義には内湾性の、
斧足綱翼形亜綱マルスダレガイ目ニッコウガイ上科ニッコウガイ科サクラガイ Fabulina nitidula
を指すが、これによく似た同属の、
カバザクラ Fabulina iridella(外洋に開いた湾に棲息する傾向があり、サクラガイにはない殼頂から後腹部にかけての二条の白色放射彩を持つことを特徴とする)
及び、同属の、
ウズザクラ Fabulina minuta
ハツザクラ Fabulina pallidula
近縁種である、
モモノハナ(エドザクラ)Moerella jedoensis
ユウシオガイ Moerella juvenilis
オオモモノハナガイ Macoma praetexta
シボリザクラ Loxoglypta clathrata
ヒラザクラ Tellinides ovalis
などをも含み、更には殻が独特の長卵形を成す、
トンガリベニガイ Tellina rostrata
及び同属で取り分け美しい紅色・淡紅色を示す(稀に白色個体もある)、
ベニガイ Pharaonella perieri
なども「桜貝」と一般通称する仲間に入る(主に保育社昭和三四(一九五九)年刊の吉良哲明「原色日本貝類図鑑」に拠ったが、学名は最新の情報で逐次確認した)。幾つかの画像と解説を Naofumi Yasunobu 氏のサイト「海山歩記」のこちらのページで見られる。
……遠い昔……この江の島の「貝広」で……買いましたね……ベニガイ……覚えていますか?…………]
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