鬼城句集 秋之部 秋の日
秋の日 砂原を蛇のすり行く秋日かな
本堂に秋の夕日のあたりけり
秋の日に泰山木の照葉かな
[やぶちゃん注:「泰山木」モクレン目モクレン科モクレン属タイサンボク
Magnolia grandiflora。「照葉」は一般には「てりは」と読み、草木の葉が紅葉して美しく照り輝くこと。また、その葉を指す。照り紅葉とも言うが、ここはその意ではないと思われる。何故なら泰山木は常緑樹で目立った黄葉を示さないからである。では何故「照葉」なのかと言えば、これは文字通りの秋の陽に照る葉の謂いであろうと推測するからである。泰山木の葉は葉の表面にかなり強い光沢がある(裏面には毛が密生して錆色に見えるがこれは周年であるから泰山木を親しく詠む人がこれを黄葉と誤認することはあり得ないと考える)。その葉の表面に映え照る秋の陽の謂いであろう。大方の御批判を俟つ。]
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