愚に耐えよと窓を暗くす竹の雪 蕪村 萩原朔太郎 (評釈)
愚に耐えよと窓を暗くす竹の雪
世に入れられなかつた蕪村。卑俗低調の下司趣味が流行して、詩魂のない末流俳句が歡迎された天明時代に、獨り芭蕉の精神を持して孤獨に世から超越した蕪村は、常に鬱勃たる不滿と寂寥に耐へないものがあつたらう。「愚に耐えよ」といふ言葉は、自嘲でなくして憤怒であり、悲痛なセンチメントの調しらべを帶びてる。蕪村は極めて溫厚篤實の人であつた。しかもその人にしてこの句あり。時流に超越した人の不遇思ふべしである。
[やぶちゃん注:昭和一一(一九三六)年第一書房刊「鄕愁の詩人與謝蕪村」の「冬の部」より。]
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