靑い紙の上に薔薇を置く 大手拓次
靑い紙の上に薔薇を置く
おまへは法體(ほつたい)をした薔薇である、
呼吸をながながとかよはせ、
あらゆる生物(せいぶつ)のうへにとけくづれる。
月のひかりをしりぞけ、
あをくあをく こゑのない吹雪のいただきをもとめる。
みづはなく、
みづはなく、
この世のみちに消されてしまふ。
ただ
あをあをとする薔薇の花。
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